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メディア掲載情報

新エネルギー専門雑誌「ソーラーシステム」に当社寄稿連載記事「太陽光発電 とソフトウェア」が掲載されました。 2

2003/01/10

雑誌「ソーラーシステム」掲載 連載記事
2003.01.10



「太陽光発電とソフトウェア」
「ソーラーシステム」第91号掲載

計測ソフトウェアについて

株式会社ラプラス・システム
代表取締役 堀井雅行


計測ソフトウェアとは

今回は計測ソフトウェアについてご説明致します

科学技術では自然科学に限らずその研究対象や開発品において、データを収集することが不可欠です。実験や調査によるデータを解析しての現状把握や、問題点、有効性などの解析をすることなしに、研究開発が成果をあげることは有り得ません。小柴教授がスーパーカミオカンデによるニュートリノの計測でノーベル賞を受けられたように、データ計測はそれ自体大変重要です。

データ計測と言えば、学校での理科や物理の実験などで行った、実験データを目で読みとって、数字を記録して、それをグラフ用紙にプロットして、表にして、さらには結果や考察を添えてレポートを提出、といった事が連想されます。今ならデータを表計算ソフトに入力して、グラフを描画したり、解析したりという事になるかも知れませんが、いずれにしても計測ソフトウェアなるもののお世話になることは有りませんでした。

もちろんそれで事足りる場合はそれで十分です。何しろコンピュータを使った計測システムは安いものではありません。各種センサーや、信号変換器、計測機器、配線工事、パソコン、そして計測ソフトウェアが必要で、システムを構築するにはコストも手間もかかります。

しかしながらコンピュータやソフトウェアの力を借りれば、そう言った事を自動的に行ってくれるため、はるかに効率的に行えますし、そもそも人間では出来ない計測も多数あります。例えば長期的連続的に行う場合、同じ実験を同じ条件で何度も繰り返す場合、計測対象の動作速度が速く人間では対応できない場合、危険な場合、遠隔地にある場合、など様々です。

また単なる自動データ計測システムから一歩進んだ集中監視・管理システムなど、複雑化するシステムや、高度なネットワーク社会に対応したデータ収集及び解析・管理は、コンピュータやソフトウェアなしでは考えられません。またコンピュータ計測システムが地道で退屈な作業から人間を解放した点も重要です。

太陽光発電におけるデータ収集も発電量だけで有れば最近のパワーコンディショナにはほとんど現在の発電電力と積算発電量が表示させるようになっていますので、これを毎日記録すれば、発電量データは収集できますが、人間が行うのは面倒で、忘れる事もあり、さらに分単位の詳細なデータが必要で有れば、やはり計測システムの導入が必要となります。



図1



発電量が分からない、消費電力量が分からない

太陽光発電システムを設置すると、電力会社から通常の「電気使用量の明細」と共に「受給電力量のお知らせ」が送られてきます。これによって電力会社から供給された電力量(受電電力量、ここでは買電電力量とします)と電力会社に売った電力量(逆潮流電力量、ここでは売電電力量とします)が分かります。しかしながら太陽光発電システムを設置して一番知りたいのは、いったいどれだけ発電したか、それによって電気代がどれだけ節約できたかではないでしょうか。

実は買電電力、売電電力というのは設置者にとってあまり意味のない数値です。例えば、ある日の電力パターンが図1のようであったとして、消費電力のうち1kWhは夜間の掃除機によるものであったとします。これを図2のように昼間に掃除をしたとすると、買電電力、売電電力はそれぞれ1kWh減ります。すなわち掃除や洗濯を夜にしたか昼にしたか、またその時の天気が良かったか悪かったかといった、太陽光発電そのものとは何の関係もないことによって変わってしまう値であり、このことからも買電電力、売電電力は、設置者にとってはその差以外はあまり意味のない値(電力会社にとっては大変意味のある値ですが)である事がお分かり頂けると思います




また前述しましたように、太陽光発電システムを設置している場合、電気使用量の明細で記載されているのは本当の電気使用量ではなく買電電力量です。これまで分かっていたものまで分からなくなってしまいました。これでは省エネの努力をしても、その効果を検証する事もままなりません。

それでは、何故そう言う事になるのでしょうか?電力会社に言えば発電量や電気使用量を教えてくれるのでしょうか?残念ながらそれは無理です。図3のように電力メーターの所では既に発電電力と電力会社からの供給電力は連系されており、両者を分ける事は出来ません。2つの電力メーターでこの電力(系統電力)がプラスの時(発電電力より消費電力が大きく電気を買っている)、マイナスの時(発電電力が消費電力より大きく電気を売っている)の電力を測っている訳です。従って発電電力を知ろうと思えばパワーコンディショナから連系するまでの間で計測しなければいけません。






それから、発電電力だけでなく、消費電力も計測することをお勧めします。まず、地球環境への貢献、CO2の削減効果という意味では、太陽光発電によって1kWh発電するのも、消費電力を1kWh節電するのも全く同じ事です。また発電量は設置してしまえば後はお天気次第でどうしようもありませんが、消費電力は自身である程度コントロールできます。せっかく太陽光発電を設置しても、無駄な電気をどんどん使ってしまったのでは何の意味もありません。 太陽光発電を設置する事により電気に対する意識が高まり、節電効果があると言われています。その意味でも発電だけではなく、消費電力も計測してそ< のパターンを検証することは有意義です。(図4参照)


      



計測して何が分かるのか

さてこのようにデータを計測する事によって、発電量の多い少ない以外に何が分かるのでしょうか?

◆ 太陽光発電依存率

消費した電力の内、どれだけを太陽光発電によって賄ったかを表します。

太陽光発電依存率[%] = 発電電力量[kWh]/消費電力量[kWh]

1を超えている場合は、消費した電力よりも発電した電力が大きい事になります。

◆ 電気料金の削減率・額(図5参照)

やはり一番気になるのはどれだけ電気料金が削減できたかです。

削減率[%] =(1−支払い金額[円]/太陽光発電が無かった場合の電気料金[円])×100

削減額[円] = 太陽光発電が無かった場合の電気料金[円] − 支払い金額[円]

尚、電気料金の計算は、電力会社、契約種別毎に異なり、複雑な計算が必要です。





◆ 二酸化炭素削減量

太陽光発電による(化石燃料を用いた発電電力を使わないことによる)二酸化炭素の削減量です。(換算係数は平成11年度係数による)

二酸化炭素削減量[kg-CO2] = 発電電力量[kWh]×0.36

◆ 設備利用率

一般の発電所の性能を表す指標として設備利用率があり、太陽光発電でもこの指標を用いる事があります。

設備利用率[%] = 年間発電電力量[kWh]/(太陽電池容量[kW]×365日×24時間)×100

設備利用率は設置場所、設置状況、気象条件など、全ての条件を含んだ運転効率であり、条件が良くても約12%程度にしかなりません。これは原子力や火力発電所と比べると当然ながらかなり低い値となりますが、太陽光発電の場合、夜間まで計算に入れてそのまま比較するのは不公平な気もします。

さらに傾斜面日射量を計測すると次のような解析が行えます。傾斜面日射は太陽電池と同じ面に設置し、その面の受ける日射の垂直成分を測定するものです。

◆ システム効率

理論的な発電量に対しての実際の発電量の比率です。

システム効率[%] = 発電電力量[kWh]/(太陽電池容量[kW]×傾斜面日射量[kWh/㎡])×100

太陽電池容量は日射量が1.0kW/㎡の時の発電量ですので、理想的には100%となるはずですが、前回ご説明したように太陽光発電システムとして温度特性や、汚れなど数々の低減要因があり80〜90%程度となります。月毎のシステム効率を求めれば、温度との関係など、低減要因が解析できるかも知れません。

◆ PV効率

太陽電池の受けた全ての日射エネルギーに対してどれだけ発電したかを表すもので、太陽電池モジュールの変換効率(日射エネルギーをどれだけ電気エネルギーに変えたか)を表します。

PV効率[%]= 発電電力量/(太陽電池面積[㎡]×傾斜面日射量)

太陽電池モジュールの変換効率は各型式毎に異なりますが、カタログに記載されています。

その他にも、温度を計測すれば、温度の発電量に対する影響、パワーコンディショナの入力側の直流電圧電流を計測すれば、パワーコンディショナの性能を解析する事が出来るなど、太陽光発電システムを解析するには様々な性能指標があります。

さらに複数ヶ所のデータを計測すれば、システムや地域の違いによる比較検討が行えます。

こいった解析を計測データを基に表計算ソフトで行うのも楽しいかも知れませんが、やはり専用の解析ソフトが有れば、便利です。


システム異常の解析にも有効

太陽光発電システムの設置時にはメーカーは品質に万全を期しているとは思いますが、残念ながら中には能力をフルに発揮できていないシステムが有るのも事実です。上記で計算した指標が極端に悪く、その原因を調べたい場合にも計測データとソフトウェアが役に立ちます。

図6の様に、正常に動作していれば、日射が1.0kW/㎡の時に発電電力は太陽電池容量に近い値となり、ほぼ比例した関係になります。

図7の様に日射に対しての発電量が、一定時間下がっている様な場合、特にこれが毎日続いている場合には、日陰の影響である可能性が高いです。

図8の様に、やはり日射に対して発電電力が追従せず、頭打ちになっていたり、変な形をしていれば、パワーコンディショナを疑ってみるべきです、故障や、調整不良が考えられます。

図9の様に日射に対して発電電力は比例しているのですが、値が小さすぎるといった場合には、太陽電池そのものの不良、パワーコンディショナの故障、表面の汚れ、配線不良、などいろいろな原因が考えられますので、一度メーカーの方に確認された方が良いと思います。

このような事は詳細なデータを計測して、グラフ・帳票化して始めて分かる事です。毎月の電気料金の明細だけでは、なんだか少ないような気がするというだけで、明確な事は決して分かりません。

       







運転状況をビジュアルに表示

次に計測ソフトの重要な役割は、運転状況をリアルタイムで表示する事です。なにしろ太陽光発電システムには稼働部がありませんので、太陽電池を見ているだけでは発電の様子は何も分かりません。計測ソフトを用いれば、発電量や電気の流れ、故障状況などリアルタイムで、視覚的に把握する事が出来ます。

また太陽光発電に関する様々な情報を表示する事が出来るなど、システムのアピールに大変有効であり、一般の方に対する啓蒙の役割も果たします。(図10参照)



今後も計測システムは重要

NEDO太陽光発電フィールドテストやJQA住宅用太陽光発電計測システムなど、これまでに多くの有意義なデータが収集され、研究開発に大いに貢献してきました。

しかしながら、太陽光発電はまだまだ発展途上の技術で多くの課題があり、また次々と新しい技術が開発されています。それらの克服や検証のため、また今後の普及促進のためにも日射や運転データなどの基礎データの収集とその解析は大変重要です。そして計測システムにおいてソフトウェアはその中核を担っており、今後さらにインターネット対応などの新しいシステムや、より高機能で使いやすいものが求められています。

当社ではこれまでにも多くの計測システムを納入してまいりましたが、今後も更に機能の向上を図ると共に、風力発電やコージェネレーションなど他のシステムにも対応した計測ソフトウェアを開発し、新エネルギーの研究開発と普及促進に貢献していきたいと願っております。



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「ソーラーシステム」第91号掲載